Case 02

歯科医・ラッパーとして活動しながら、家族との時間も大切にしたい 小安正洋の「CICCA」

2016/08/22
歯科医という看板を背負って第一回社会人ラップ選手権に出場し、さまざまなメディアで話題となった小安正洋さん。そんな歯科医、音楽アーティスト、父親という三つの顔を持つ小安さんに、ワークライフバランスに関するお話などをお伺いしました。

国家試験前に全国ツアーをまわるハードな学生生活

― 第一回社会人ラップ選手権の様子がいろいろなメディアに取り上げられていましたが、現在は、どういった活動をされているのでしょうか。

現在は、週4〜5日間は、病院で診療をし、診療後や休日にライブなどの音楽活動をしています。あとは、大学の兼任講師を務めているので、学生の指導もしていますね。音楽活動に関しては、昔より活動時間は短くなりましたが、第一回社会人ラップ選手権に出たあとは患者さんからも反響がありました。過激な発言もありましたので、ユーモアの通じる患者さんでよかったなと思います(笑)

― 音楽活動はいつ頃からスタートされたのですか。

大学在学中に、スタートしました。ASAYANというオーディション番組内で、m-floのVERBALさん主催のラッパーオーディションがあって、最終選考まで残ったんです。その後、オーディションとは別で何か一緒に活動しようということになり、MIC BANDITZというグループでいきなりデビューすることになったんです。

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― 歯科医ではなく、音楽アーティストを本職にしようとは思わなかったのですか。

音楽活動を始める前から歯科医になりたいという気持ちがあったので、音楽だけを本業にしようとは思わなかったですね。国家試験前にツアーで全国をまわったりと、ハードなこともありましたが、うまくシフトしつつ両方頑張れていたこともあって、どちらかの活動がうまくいったからどちらかを辞めようという気持ちにはなりませんでした。

亡くなった父の言葉が後押ししてくれた

― そもそも、なぜ歯科医を目指されたのでしょうか。

絵を描くのが好きだったので、美大に行きたいと思ったこともあったのですが、絵は独学でも学べますし、何より本当に好きなことを嫌いになりたくなかったので、美大へは行く必要がないなと思ったんです。当時通っていた中高一貫の学校は、医療系の道へ進む人が多かったこともあり、歯科医の道を目指すことにしました。あと、実家が料亭を経営してて、父親が、家を継ぐのではなく「好きなことをやりなさい」と言ってくれて。手先を使うと負う部分では、歯科医と料理とアートでリンクする部分があるなとも考えましたね。

― 音楽活動をされながら、歯学部に通うのは大変ではなかったですか。

歯学部は出席回数などがかなり重要視されるので、そこはハードでした。でも、どんなに前日が遅くても「絶対に授業を休まない」と自分の中でルールを決めて、両立させていましたね。やっぱり、授業を休んだりして、一度生活のサイクルが崩れてしまうといろんなことが良くない方向へいってしまうので。あと、ASAYANのオーディションの結果が出る直前、父親が亡くなってしまったんです。歯学部へ進学する前に「好きなことをやりなさい」と言ってくれた父親のことが浮かんで、音楽活動もやってみようと思えたので、どちらかを辞めようとは思いませんでしたね。

交通事故がきっかけで、イクメンに

― 現在、歯科医、音楽アーティストとして活動される他に、父親でもある小安さんですが、ご家族との時間は取ることができているのでしょうか。

今は、音楽活動を抑えめにし、歯学に関するセミナーや勉強会も厳選するようにして、家族との時間をつくるようにしています。父親の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の会員でもあります。いかに家族のために時間をつくるか、と常に考えていても、奥さんに怒られてしまうことがあるんですけどね(笑)

― イクメンですね! どうして、育児に積極的に参加するようになったのですか。

子どもが生まれ、バタバタしている時期に交通事故にあってしまって。実は、その事故がきっかけで後遺障害が残ってしまったんです。その時にもし自分や家族の身に何かあった時は、助け合いたいと思い、家族のあり方を考えるようになりました。あと、現在5歳と2歳の子どもがいるのですが、成長するにつれて接する機会が少なくなっていくと思うので、子どもたちが幼いうちにたくさん接しておきたいという気持ちも強いですね。家族との時間をとりつつ、仕事をして音楽活動もするため、優先順位を考えつつワークライフバランスを調節しています。

歯の病気を予防するため、世の中に情報を広めたい

― ご自身に合ったワークライフバランスを上手に保たれている小安さんですが、今後の展望などを教えてください。

最近ではケトジェニックダイエットアドバイザーとして、歯を削ったり抜いたりする治療の他に、患者さんの食事指導にもあたっています。歯は、食事をするためだけにあると思いがちですが、口から食べたものが消化・吸収され、排泄されていくので、口も消化器官のひとつなんです。だから、歯を健康な状態に保つにはただ虫歯や歯周病を治療するだけでなく、食生活を改善する必要があるんです。そうしたことを患者さんにお伝えし、動機づけをしていけたらと思っています。

― 食生活までアドバイスしてくれる歯医者さんは、なかなかいないのではないでしょうか。

そうかもしれません。患者さんの歯以外のプライベートな部分も聞くことができるようできる限り距離を縮めて、信頼関係を築くようにしています。食生活以外にも、ストレスが歯を悪くしていたりと、意外なところに原因があったりするんです。日本はスウェーデンなどの医療先進国に比べると、歯の病気を予防することに力を入れていないので、もっとじっくり患者さんと向き合っていきたいですし、SNSを使って情報発信をするなど、診療所以外でもできることをしていきたいと思います。ネットが発達した時代ですし、世の中への還元の仕方はいろいろあるんじゃないかなと考えています。

― では、最後に現在歯学を学んでいる学生にメッセージをお願いします。

まず、実際に大学病院で実習をしている学生さんへ。もちろん、さまざまな科をまわりながら先生がどのような治療を行なっているのかを見ることも大切ですが、それぞれの先生が、患者さんとどのようなコミュニケーションをとっているのかよく観察してみて下さい。先生がどのような言い回しをしていて、患者さんはどのような反応をするのか。そうしたところをよく観察しておくと、実際に現場にでた時、患者さんとの信頼関係を築くことに役に立つのではないでしょうか。
あと、もっと下の学年の学生さんは、歯の模型を削る実習をしているかと思います。そうした実習では「スムーズに終わらせたい」とか「早く帰りたいな」といった気持ちで、失敗しないように進めてしまいがちかもしれません。でも、学生のうちしか失敗できないので、今のうちにたくさん失敗しておいて欲しいと思います。学生のうちは、何事も失敗を恐れないことが大切ですよ。

このインタビューに答えた人

小安正洋(COYASS)

1978年東京都生まれ。歯学博士。歯科医師。日本審美歯科学会認定医。日本ファンクショナルダイエット協会認定ケトジェニックダイエットアドバイザー。MIC BANDITZやデブパレードなどのグループでメジャーデビュー。現在は、複数の歯科で勤務しながら、音楽活動も行なっている。現在は元 SOUL’d OUTの Bro.Hi氏と共に Edge Player Organizationを結成、またNPO法人ファザーリング・ジャパンの会員でもある。
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[ライター/松島由佳(Concent) カメラマン/本藤太郎]

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