Case 03

患者さんの生活を180度変えるような治療がやりがい 歯科医師・森本哲郎の「CICCA」

2016/08/22
千葉県稲毛海岸で海岸歯科室を立ち上げ、今年で25年を迎える森本哲郎さん。そんなベテラン歯科医師の森本さんに歯科業界でのやりがいの見つけ方や、これからの歯科医師・歯科衛生士に大切なことをお伺いしました。

身近だった歯科医師という仕事

― 歯科医師になろうと思ったきっかけを教えてください。

祖父母も父も歯科医師で、その働く姿を幼い頃から身近で見ていたからか、自然に「歯医者になろう」と思うようになりました。特別に「歯医者になりなさい」と言われて育ったわけではありませんでしたので、高校生の頃、大学受験を前にしていろいろな道を考えました。一時は会社員に憧れたりもしましたね。でも結局、一番具体的に働くイメージが湧いたのが「歯医者」という仕事だったのです。自宅が歯科医院で、歯科医師は私にとって非常に身近な存在でした。

― ご家族の働く姿を間近で見てきて、ご自身も歯医者になろうと決意されたのですね。どのような歯医者になりたいと思いましたか。

いや、そこには特別な思いはなかったかもしれません(笑)むしろ患者として父の治療を受けていた子どもの頃は、歯の治療は「痛い」「ちょっと怖い」と感じていました。医院に来る他の子どもたちと同じ気持ちでしたよ。

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歯を削らない治療を広げたい

― 実際の患者さんの気持ちがわかるからこそ、海岸歯科室では「世界一優しい歯科医院」を目指していらっしゃるのですね。

そうです。診療にあたっては「優しさ」というのを一番重要視しています。優しさというのは歯科医師や衛生士が患者さんに接する際にももちろん大切ですが、治療の際の「優しさ」は歯を「削らない・抜かない」というところにつながっています。
「削らない・抜かない」ためにいちばん重要なのは「虫歯にしない」こと。虫歯にしないためのアプローチは、実はお母さんのお腹の中にいるとき、つまりお母さんの妊娠中に始まります。虫歯は感染症なので、無菌状態の赤ちゃんにとっては、お母さんの口内菌も感染源になってしまう場合があります。妊娠中にお母さんの口の中の環境をより良く変えることが、虫歯予防のスタートなのです。
悪くなってから治療するだけでは、本当の意味で虫歯をなくすことにはなりません。虫歯のない環境を作り、歯科医師が歯を削らない治療を広げるために、妊婦さんの治療や子どもに特化した小児歯科診療にも力を入れています。

― そのようなお気持ちから海岸歯科室では一般診療(3F)とフロアを分けて、子どもも通いやすい「子どもの歯医者さん」フロア(2F)を設けているのですね。

はい。2016年10月からは「子どもの歯医者さん」を別の建物に移して、さらに小児診療を充実させたいと考えています。そして2Fは、予防歯科のフロアになります。こちらは歯科衛生士が担当する予防処置専門のフロアです。
虫歯がなく、削りも抜きもしなくて済むのが理想ですね。でも現実には虫歯や歯周病を含め、歯の悩みを抱えてさまざまな患者さんが来院します。治療するにあたって「患者さんの歯を一本でも多く残す」ために、海岸歯科室では、「歯とその周辺の病気を予防する」という観点をとても大切にしています。

― それは、歯科の観点から患者さんの健康をサポートしていく、トータルヘルスプログラムの一環なのでしょうか

そうとも言えますね。口の粘膜は鼻やのど、皮膚や内臓にまでつながっているので、口から菌が入ると粘膜を通じて体内に広がっていく。たとえば近年の研究では、歯周病の菌が血中に入ると全身にまわり、心疾患を引き起こす原因になることも明らかになりました。他にも、口内菌が肝臓に影響を及ぼしたり、糖尿病と因果関係を持っていたりする。つまり、口腔内は菌の入り口。その入り口をきれいにすることが全身の健康につながるというわけです。
トータルヘルスプログラムというのは、患者さんの歯や口内環境の治療を、口の中だけではなく全身の健康につなげよう、という考え方から生まれた歯科診療のあり方です。この秋新設される予防処置専門のフロアで、歯科衛生士が担当するプログラムでもあります。

自分の仕事にやりがいを持っているかどうかが大切

― 先生は院長先生として若手の歯科衛生士さんや歯科医師さんの指導にもあたっていらっしゃいますが、指導の際に気をつけていることはありますか。

海岸歯科室では、誰が診察しても最高の技術の治療を提供することを目標としていますので、一人ひとりの技術を向上させることに重きをおいていますが、歯科医師も歯科衛生士も、自分の仕事に対してやりがいを持っているかどうかをいちばん大切にしていますね。
兼任できる仕事もあるので仕方ないのですが、日本では歯科衛生士と歯科助手の区別がつかないことが多いのです。しかし、歯科衛生士は、専門の勉強を重ねトレーニングを積んでいくと、予防処置から歯周病の治療まで医師を介さずに行うことができる職業なので、そうしたところにやりがいを感じてもらえたらと思います。

― 歯科衛生士はそれほどの知識や技術を持っているのですね!

そうです。海岸歯科室では、そのような高いレベルの知識や技術を持った歯科衛生士を育てることも実践しています。今後一人でも多くそのような歯科衛生士を育てて、「こんな歯科衛生士になりたい」という思いを抱く人たちが増えていくことが目標です。もちろん、歯科医師も同じで、高い治療技術を持った医師を一人でも多く育てて、歯科医師になりたい若者を増やしたいと考えながら指導にあたっています。

― 素敵ですね。高いレベルを目指して働くこと自体がやりがいにつながりますね。

おそらく、患者さんが笑顔になって、患者さんの生活が180度良いほうへ変わってしまうような治療ができたときにはとても嬉しくて、大きなやりがいを感じるはずなんですよね。「気がつくと毎日同じようなことをやっているな……」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、そうではなくて、本来の医療や、医療の本質を若い人たちに学んでいって欲しいです。

訪問診療には歯科医師のやりがいがつまっている

― それでは最後に、これから歯科医師や歯科衛生士になろうかなと考えている方に向けて、メッセージをお願いします。

近年、歯科医師になりたい人が減っていたり、また、患者さんが少なくて歯科医師の数が余っているというようなネガティブな話を耳にします。ですが、単純に歯科医師の数が余っているとは言えないかもしれません。その理由は、歯科の受診率が非常に低いからです。今後さらに高齢化が進めば、歯科の受診のニーズは高くなり、患者さんの数も増えていくでしょう。そうしたことから、ニーズが増えているのは“訪問診療”の分野です。

― これからは訪問治療に力を入れる必要がありそうですね。

そうです。訪問診療は外来と違い、寝たきりなどで実際に歯に悩みを抱えていても満足に通院できないほど弱っている患者さんや、そのご家族の望みに応えていく必要があります。患者さんがだんだんと歳を重ねていくなか、ご家族が一番に望むのは、「最期まで好きな物を食べさせてあげたい」ということ。この思いに応えられるのは歯科医師だけです。ですが、訪問診療には外来とは違った独自の知識や技術が必要なため、残念ながらなかなか普及していない現状があります。もちろん大変な面もありますが、それができると患者さんもご家族も本当に喜んでくれるんですよ。そこで初めてやりがいを感じられる。
これから歯科医師を目指すなら、ぜひ“訪問診療”もできる歯科医師になって欲しいです。そうした高い志を持って歯科医師、歯科衛生士を目指して欲しいと思います。熱い想いを持って歯科医師や歯科衛生士になる人たちをこれからも応援しています。

このインタビューに答えた人

森本哲郎

1963年東京都生まれ。東京歯科大学卒業後、東京歯科大学水道橋病院総合科、その後勤務医を経て、千葉県の稲毛海岸に海岸歯科室を開院。自身が院長を務める歯科医院は今年で開院から25年を迎え、2016年10月には予防処置専門に特化した分室をオープンさせる。
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[ライター/姉川直保子 カメラマン/本藤太郎]

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